あと歌手によっては自分専用のバンドやリズム・セクションのみ(それはドラムスだけの場合もあれば、ちゃん とベース、キーボードやギターがついてくることもあった)連れてくるケースがあった。それは大体ある程度 大物の歌手に多かった。例えば小林旭、和田アキ子、欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)、松尾和子など。 フルバンドの楽屋の隅の小窓からはステージが見えるようになっていた。小林旭は自分のバンドを引き連れ て来ていたので、私達は彼のショーの時お役御免でそれを小窓から眺めていた。すると本番のショーの途中 で(彼の歌の間奏の時)小林旭が超不機嫌な仏頂面で"おい！テンポが遅いゾ"とばかりに腕を大袈裟に上下 に振り続けていた。その時何故か私の脳裏に"唯我独尊"という言葉が浮かんだ。あと和田アキ子のショーの 時にやはりリズム・セクションを連れて来ていたので私は用無しなのでステージのそばでウロウロしていたら ショーが始まる時間になって和田アキ子が来た。そして私に気がついた。その時の和田アキ子の表情を40年 近く経った今でもハッキリと思い出す。あの今でも強面の和田アキ子のこれぞTHE"鳩が豆鉄砲を食った" ような顔。あとフランク永井ですが思った以上に小柄でチンチクリンでしたがでもやはりまさに"低音の魅力" はその通りでした。そして今でも決して忘れられないあの事件のことについて話そう。あの頃ある日京都の バンドマンが可成りの人数、一斉に"大麻不法所持"で検挙されて新聞にデカデカと載った。実は私も好奇心 で大麻を五回位やったことがある。だから当時私はマジで自分も捕まるんじゃないかとビビッていた。ただ法 的には大麻を吸っただけでは罪にはならない。なにか不思議な論理だ。その時の体験を赤裸々にここに綴ろ う。大麻は煙草のように紙で巻いて吸うことが多かった。さてどのような感覚になるのか、それは人によって 多少違うと思う。私の場合で言うと、ある時は京都の夏の風物詩"大文字"が頭の中で激しく点滅した。又あ る時は、その時飲んでいた日本酒が食道をゆっくりと降りてゆくのが妙に生々しく感じられた。又ある時は、 演奏中にドラムの奏法で"リムショット"をする時スティックがスネアドラムの縁にあたるまでに何千万年かか るんだろうと漠然と思ってしまった。やはりある時演奏中にある先輩のベースマンがニヤニヤ、ニヤニヤ笑っ ていた。この先輩は間違いなく"キメていた"と思う。それで変に楽しくなったと思われる。あと良く言われるの が例えばCDプレイヤーなどで音楽を聴いていて例えばベースの音が聞きたいと念じると特別そのパートが 強烈に耳に飛び込んで来るということはあった。                                                    まぁ大麻は